どんな心構えで仕事をするかが大事
INTERVIEW

どんな心構えで仕事をするかが大事

石川県七尾市にある「すし創作 河はし」は、魚の仕入れから管理、調理に至るまでのすべてにおいて妥協がない職人のお店です。何を大切にして、お店づくりをしているのでしょうか。


すし創作 河はし

河橋 憲

Ken Kawahashi

【経歴】
中学卒業後、和倉温泉にて板前として働きはじめる。
その後、金沢で日本料理を学び、すし職人として修業を始める。
11年間の修行を経て、創作すし河はしをオープン。
完全予約制の人気店。味も店主の人柄も楽しめるすし店。

お寿司屋さんになったのは寿司が大好きだったから

前川:なぜお寿司屋さんになろうと思ったのですか?

河橋: 寿司が大好きだったからです。実家が魚屋をしていて、子どもの頃、忙しい土日には母がいなり寿司や太巻きを作って置いておいてくれました。また、父が呑みに行ったお土産に買ってきてくれる折詰のお寿司を翌朝食べるのも楽しみでした。

前川: なるほど。

河橋: 寿司の道に進みたかったのですが、中学時代に登校拒否になり、2年生のはじめから3年生の2学期まで中学校に行きませんでした。そのとき母に「学校に行かずに家にいても駄目だ」と言われ、知り合いの魚屋を手伝いに行くことになりました。

前川:それが中学2年生のときですか。

河橋:はい。友達はいたのですが、特定の人と繋がりがあれば十分と思うタイプでしたし、勉強が嫌いだったので、学校に行かなくなったのです。高校に行くつもりもなかったので、中学卒業と同時に寿司屋で働こうと考えていました。しかし寿司屋のつてはありませんでしたので中学を卒業した翌日から旅館で板前として働き始めました。

前川:今の時代ではなかなか考えられないような流れですね。

河橋:はい。住み込みで働くのは、出来るだけ家にいたくないと思い飛び出したからですが、はじめの頃はホームシックにもなりました。でも住めば都で、段々とそれも治まりました。今は40歳ですし、実家から出た期間の方が長いですよね。

前川:そうですね。

河橋: 紆余曲折はありましたが、よく遊びに行ったボーリング場で、その寿司屋の息子さんと仲良くなったのです。寿司屋になりたいという相談をすると、うちにおいでと誘っていただきました。それから、11年間その寿司屋で働かせてもらいました。

前川: なるほど。

河橋: 今でも忘れませんが、はじめての給料で寿司屋に行きました。15歳の若造が一人で寿司屋に行くのは勇気が要りますし、先輩に「お金は出すので一緒に行ってほしい」と頼みました。当時の私にとっては、2万円、3万円は大金です。でも寿司屋に行きたかったのです。緊張して味がよく分からなかったのですが、食べたものははっきり覚えています。カウンターに座ったものの、作法が分からず注文することもできませんでした。でも全部美味しかったという記憶はあります。寿司が大好きだったのです。

どこで仕事をするかではなく、どんな心構えで仕事をするか

前川:食べるのもそうですが、握っている姿がかっこよくて憧れたというのもありますか?

河橋: そうですね。ただ何でもそうですが、きっかけというのはそういう花形の部分でいいと思うのです。野球選手だってプロを見てかっこいいと思って憧れるでしょうし、相撲も横綱を見て憧れると思います。裏でどれだけ大変なことをしているかなんて、外からは見えません。しかし、やはり今の時代悲しいのは、経験より情報が勝ってしまっていることです。若い人は給料の額や勤務形態などを気にしがちですが、まずはやってみることが大事だと思うのです。

前川: 体験や経験に勝るものは無いということですね。

河橋: はい。過去に2人ほど使ってほしいと来てくれた人がいましたが、やはり今の若者だからか「給料はいくらですか?」と最初に聞かれました。私は「それは言えない。言ったら来ないでしょ」と伝えました。結局給料がいくらかは教えましたが、案の定来ませんでした。

前川:なるほど。

河橋: 今の世の中どんな仕事でもやろうと思えばできます。給料の高い仕事も選ぼうと思えば選べます。でもその中で「自分はこの仕事がしたい」と決めたのであれば「それしかない」と思って打ち込まないといけないと思います。

前川: 良いこと言いますね。

河橋: 色々なタイプの人がいます。自分の店を持ちたい人もいれば、そうじゃない人もいます。でも、夢を持って仕事をしなくてはいけません。大事なのは、修行する場所がどこかではなく、どんな心構えで仕事をするかです。年齢が若くてもそうじゃなくてもスタートは皆一緒ですし、同じことをするにしても10年かかる人もいれば3年でできる人もいます。技術が全てでもありません。私も不器用な方でした。人ができることができない人間でした。

前川:そうなのですか。

河橋:私が思うに、職人で器用な人はいないと思うのです。それは手先が器用かどうかという意味ではありません。商売をしている人もそうです。器用で頭の良い人は商売しないと思います。不器用で、これしか出来ないからやっているのです。職人はよくテレビで見るように「こだわりが強い」とか「こうでなければならない」とか言いますが、柔軟な人ならそんなことは言いません(笑)

前川: たしかに(笑)

河橋:なので、職人は大なり小なり皆不器用な人だと思います。器用な人は職人はやらないと思います。でも、不器用でも何かやれることを見つけて、お客様に喜んでもらうことです。私の親方には「形を重んじるか、味を重んじるか」と言われました。見た目も大事ですが、まずは食べて美味しいと思ってもらわなくてはいけません。たった一貫の寿司に5時間、10時間とかけて、それで美味しいと言ってもらえると、ゾクゾクっとなるのです。

「美味しかった」と満足してもらえる店にしたい

前川: 最後の質問です。これからどんなお店にしていきたいですか?

河橋: お客様が店を出たときに、高かったとか安かったとかではなく「美味しかった」と言ってもらえるような店にしたいです。それがつまり、満足してもらえているということだと思います。なので、難しいことはいらないのです。まずはお客様に喜んでもらって、美味しいものを提供することです。価格は、こちらが決めるものですが、お客様が決めるものでもあります。こちらが出した価格に納得してはじめて、お客様が対価を払ってくれるわけです。それを払っても満足したということは、その対価よりも満足したということです。なので、好きで何度も来てくれる人は、お店を作ってくれる人です。以前は、お店の仕組みを試行錯誤したこともありましたが、今は完全予約制に落ち着きました。人里離れた山の中の店ですが、それでも来てくれるお客様を大事にしたいのです。喜んで帰ってもらいたいのです。思い出に残る一品を食べてもらう、そういうことを意識してやっていきたいです。

前川: なるほど。

河橋: 良い職人には偏屈な人が多いですよね。あれはお客様に喜んでほしいからそうなるのです。そして、それを分かった上で行くお客様がいるわけです。それでいいのです。

COMPANY INFO


すし・創作 河はし

【住所】
石川県七尾市矢田町5-6-14(MAP

【TEL】
0767-53-4000

【営業時間】
木~火曜日・祝日
ディナー 17:00~21:00

【定休日】
水曜日

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