事業承継というイベントは「変化」と共に「成長」へとつなげることができる
COLUMN

公認会計士が語る、もっと企業が成長する方法とは「事業承継は成長のチャンス」

成功したい。売上を伸ばしたい、利益を上げたい。

これはすべての経営者の皆さんが抱く願望です。しかし、「売上を伸ばす、利益を上げる」というのは企業が成長したことによる果実であり、結果に過ぎません。一時的な外部要因による売上増・利益増があったとしても決して長続きするものではありません。むしろ、一時的な特需が終わった後はマイナスに転じることがほとんどであります。なぜなら、そこに売上や利益に見合った企業としての成長がないからであります。

ではどうしたら売上や利益を伸ばせるのか。それは「事業承継」を行うことです。というと「?」となる方がいらっしゃると思いますが、要は事業承継を企業の成長につなげようというお話をさせて頂きます。

以下の図は、中小企業庁が公表している事業引継ガイドラインからの抜粋であります。

(図表13)事業承継が行われた企業とそうでない企業で経常利益率が2%も違っていることがわかります。なぜ、このような差が生まれたのでしょうか。様々な要因がありますが、①変化への許容度と②投資意欲の差が経常利益率の違いになっていると考えられます。

01 変化への許容度

企業として「成長」したい。従業員にもっと成長してほしい。経営者の方は常にそう考えていらっしゃると思いますがなかなか一筋縄にはいきません。なぜなら、成長には新しいものへの「不安」や、心地よい現状(コンフォートゾーン)から変化することへの「恐れ」というメンタルブロックがあり、その思考・行動を抑制してしまうからであります。この不安や恐れは、決して感じなければいいというものではありません。それらの「不安、恐れ」というのは企業の健全な発展のためのリスク意識でもあるので、適切にコントロールすることが肝心です。特に従業員は、経営者の皆さんに比べてリスク許容度が低い、つまり変化に対する「不安、恐れ」というメンタルブロックが強いものです。

従業員の成長なくして会社の成長なし。ただし、従業員に「変化を恐れるな!」と言っても逆効果です。そこで、事業承継という経営者が交代する大きな変化の時期を事業変革、従業員の意識変革の機会としてとらえてはいかがでしょうか。事業承継という一大イベントにおいては、変化に対する従業員のメンタルブロックが薄くなっているため絶好の機会です。一般的に、「事業承継=株式承継」であると思われている経営者の方が多いと思います。これは非常にもったいないことです。事業承継を期に、取引先の選定、従業員の福利厚生や評価制度、資金調達先の再検討はもちろん、経営理念やビジョンを見直すチャンスであります。

一方で後継者の方は変化させることにばかり目が行きがちです。先代経営者が培った経営のコンピタンス(本質的な力、競争力)を忘れずに、そして先代経営者への感謝の気持ちを持って事業を引き継ぎたいものです。

02 投資意欲の差

もう一つの要因は投資意欲の差にあります。以下の図(図表16)で示される通り、49歳以下の若い経営者の方は、まだ10年以上経営者であり続ける可能性が高いわけでありますので、投資意欲は盛んです。銀行も70歳を超えて後継者がいない会社には大きな設備資金は出せないと判断する可能性が高いでしょう。

このように事業承継というイベントは、「変化」へのメンタルブロックが低い状況という「成長の機会」を提供してくれます。事業承継以外にも、例えばM&Aについても企業の規模的成長のみならず、従業員さんの成長にもつなげることができます。ただし、M&Aは案件がクローズした(決済が完了した)時点でプロジェクトが終わってしまっている例が非常に多いのが嘆かわしいことです。M&Aの本質は、M&A後に有形・無形の資産をシナジー効果でどれだけ増やせるかにあります。せっかく変化に対する許容度が上がっている時期ですので、これを機に今までできなかった人事改革や借入先の変更、業務プロセスの見直しなどを行ってみてはいかがでしょうか。

また、株式上場も然りです。株式上場の本質は経営者がキャピタルゲインを享受することではありません。上場前に行われる企業内の様々な改善活動、そして上場後の信用力を生かした企業・従業員方の成長に主眼を置くべきです。

事業承継、M&A、株式上場。いずれも皆さんの経営者人生の中で1度あるかないかの重要なイベントです。皆さんが経営に誇りをもち、企業の成長を後押しできるような、そんなパートナーでありたいと思います。

WRITER

吉谷 哲朗

公認会計士・税理士

吉谷 哲朗

Tetsuro Yoshitani

2003年公認会計士試験に合格。大手監査法人でキャリアを積んだのち、2008年から4年間上海にて日本企業の海外進出をサポート。
現在は「成長する企業のパートナー」として、M&A、海外進出、事業承継に取り組む。また2018年に立ち上げた(一社)北陸東京プロマーケット上場支援協会にて、中小企業の上場をサポートしている。

(株)はくさんパートナーズ 代表取締役

http://hakusan-ps.com/

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