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残業代の対策は万全ですか?
COLUMN

残業代の対策は万全ですか?

2020年4月1日より、法律が変わり、残業代の時効が3年となりました。経営者にとっては、非常に重要な改正です。

もともとの時効は?

もともと、残業代の時効は「2年」でした。時効については、権利によって期間が様々だったのですが、残業代はかなり短めに定められていたのです。しかし、民法改正に伴い、「3年」とされたのです。
具体的に言いますと、2020年4月1日以降に支払われる賃金については3年の時効期間が適用されることになります。

どんな影響?

私は経営者側の弁護をしておりますので、残業代請求を多く担当します(残業代請求を受ける側の弁護ですね)。基本給が高い方で、残業が多いケースですと、数百万円という請求も珍しくありません(過去、数千万円の請求がなされたこともありました)。そんな場合、時効が2年であれば、それだけ金額が少なくなるわけです。しかし、3年になると、単純計算で1.5倍になります。もともと支払うべきであったと言われればそれまでなのですが、経営者にとって、脅威と言えます。中小企業では、それだけで資金ショートする可能性もあります。このコロナ禍においてはなおさらでしょう。

残業代請求のおそろしさ

残業代のトラブルは、多くの場合、従業員が退職した際に発生します。実は、ここに落とし穴があります。退職後の残業代は、法律上、年14.6%の割合による遅延利息がつくのです(賃金の支払いの確保等に関する法律第6条参照)。この低金利の時代に、驚異的な数値ですよね。裁判が長引けば長引くほど、会社側に不利になってしまうわけです。
さらに、付加金という制度もあります。これは、従業員に対する残業代と同額の支払いを裁判所によって命じられる制度です(労働基準法114条)。場合によっては、金額が2倍になってしまうリスクがあるということなのです。

早急な対応を

残業代請求は、無防備なのが一番おそろしいです。経営者は、従業員のことを考えて手当を増やしたのに、裁判所に行くと、かえってそれが基本給扱いとされ、その分だけ残業代が増えるということも多いのです。「こんなことなら、手当なんて増やすんじゃなかった」。こんな風に思ってしまうこともしばしばです。
大切なことは、法律と裁判所のルールを知った上で、賃金体系を決めることです。そうしないと、せっかく従業員のためを思ってやったことが、裏目に出て、あたかも「恩を仇で返される」結果となりかねません。信頼できる社労士、弁護士にしっかりと相談しましょう。

最後に

最後にもう一つ。残業代請求の現場を見ていると、経営者と従業員との信頼関係が決め手だなと思います。信頼関係がある、お世話になったという実感がある。そういった従業員の場合は、和解もしやすいですし、そもそもトラブルになることは少ないです。根底にあるのは従業員との信頼関係、そして、その上でしっかりと制度も作る。これが大切なのだと改めて感じます。

WRITER

小倉 悠治

弁護士・経営心理士

小倉 悠治

Yuji Ogura

2004年、東京大学教育学部 卒業。2007年、慶應義塾大学大学院法務研究科 修了。2018年3月、小倉悠治法律事務所 開設。2018年4月~ 2019年3月、金沢弁護士会 副会長。
弁護士資格のみならず、経営心理士・キャッシュフローコーチの資格を有し、法務のみならず労務、財務も含め心理面まで見据えたサポートを得意とする。「社長の社外幹部」として企業の成長と発展に貢献。

小倉悠治法律事務所

https://ogura-kigyohoumu.com

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