投資家は安心して投資でき、経営者はより積極的な事業展開が可能に
COLUMN

経営者保証とTPM上場「TPMに上場すると本当に経営者保証が外れるのか?」

前回、「東京プロマーケット(TPM)」について概要と上場により得られる効果をご説明したところ「TPMに上場すると本当に経営者保証が外れるのか?」というご質問をいただきました。結論から言いますと「必ず外れます」。正確には、上場準備の過程で自然と経営者保証が外れるための体制が整います。この点についてご説明します。

会社法や経営学を学ばれた方は「株主有限責任の原則」をご存知かと思います。株式会社の出資者である株主はその責任を出資の範囲に限定される、つまり、会社が債務超過になった場合の「マイナスの責任」は負わないというのがこの原則です。

但し、多くの中小企業様の実態としては借入の際に経営者保証を入れることを条件とされているため、会社が窮地に陥ると経営者個人の財産で返済しないといけないことになります。では、なぜ銀行は経営者保証を求めるのか。融資担当者の目線で考えてみます。

・会社と経営者の資金繰りの境目が曖昧なので、会社と経営者を一体として見る必要がある。

・会社の決算書は実態を表していないかもしれないので、少しでも多くの返済手段を確保したい。

・債務弁済責任を経営者個人にも負担させれば、経営者は一生懸命働いて借入を返してくれるだろう。

このようなことから、銀行は借入に対して「ガチガチ」に経営者保証を取りたがるのです。しかし、この融資姿勢が中小企業の成長を阻害してきたという弊害があります。なぜなら融資担当者が事業の将来性を感じたとしても、経営者の「現時点での」返済資力がなければ融資できないからです。

そこでその弊害を是正するために、日本商工会議所と銀行の業界団体である全国銀行協会が連名で「経営者保証に関するガイドライン」を策定しました。当ガイドラインによると、銀行が経営者の個人保証を求めないために債務者に求める要件を以下の通り規定しております。

(1)法人と経営者との関係の明確な区分・分離

(2)財務基盤の強化

(3)財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性の確保

上場審査の際に最も大切なのは、会社の成長性ではなく、外部株主が「安心して」その会社に投資を行えるか否かです。会社の発展・成長のために使われるはずのお金が経営者個人に流れてしまっては、投資家は安心してお金が出せません。そこで上場準備の最重要ポイントとして、会社と経営者を含む関連者との恣意的な取引をなくすための仕組みづくりを行います。この過程でガイドラインの(1)の要件を満たすことになります。

また、上場の際には会社の決算書について公認会計士又はその法人組織である監査法人の会計監査を受け、決算書が正しく会社の実態を表しているという適正意見をもらう必要があります。加えて、TPMの場合は年に2回の適時な情報開示が求められます。これにより(3)が満たされます。さらに、会計監査を受けた適正な財務諸表を融資審査に利用することで、会社に十分な借入返済原資があるか、返済のためのキャッシュ・フローがあるかが確認でき(2)が満たされます。

以上、上場準備の過程で経営者保証ガイドラインを満たすことになるので、銀行としては経営者保証を外さざるを得ない状況が整います。経営者保証が外れることで、会社法が想定する株主有限責任が実現された「真の」株式会社が出来上がります。投資家は安心して投資でき、経営者はより積極的な事業展開が可能になるのです。会社が加速度的に成長する効果が得られます。

皆さんの会社の成長を心から応援します!

WRITER

吉谷 哲朗

公認会計士・税理士

吉谷 哲朗

Tetsuro Yoshitani

2003年公認会計士試験に合格。大手監査法人でキャリアを積んだのち、2008年から4年間上海にて日本企業の海外進出をサポート。
現在は「成長する企業のパートナー」として、M&A、海外進出、事業承継に取り組む。また2018年に立ち上げた(一社)北陸東京プロマーケット上場支援協会にて、中小企業の上場をサポートしている。

(株)はくさんパートナーズ 代表取締役

http://hakusan-ps.com/

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